津久見市社会福祉課は、津久見市社会福祉協議会と密接に連携しながら支援に取り組んでいます。令和3年度からはじまった厚生労働省の重層的支援体制整備事業によって、対象者のいる場所に積極的に出向いて必要なサービスや情報を提供する「アウトリーチ支援員」が配置されました。今回は、津久見市社会福祉課 地域共生推進班主幹の中津留久憲さんとアウトリーチ支援員の田中亜希さんに、津久見市の福祉支援の取り組み、抱えている問題、今後の展望などを伺いました。
アウトリーチ支援員を配置して
積極的に出向いて支援を
―津久見市社会福祉課の取り組みについて教えてください。
中津留:
平成30年に福祉事務所が社会福祉課になりました。事業内容は大きく変わりませんが、以前は引きこもりには今ほどピンポイントで対応していたわけではありませんでした。しかし、現在は引きこもりだけでなく、子どもや若者が家族のケアを担うヤングケアラー問題など支援が必要な範囲は広がっています。
田中:
事業としては、社会福祉協議会に委託しているものも多いです。津久見市では、全地域に地区社会福祉協議会が設置されており、地域の自治会長や地区の役員、民生委員などの意見交換の場となっています。彼らが地域と最も密接に関わりを持っていて、地域の情報を提供しています。
中津留:
令和3年度からはじまった厚生労働省の重層的支援体制整備事業によって、津久見市では、積極的に地域に出向き、困っている人の支援を行うアウトリーチ事業をスタートし、直営の支援員を配置しました。アウトリーチ支援員は全国42市町村に配置されているのですが、九州では久留米市と津久見市だけ。今、わたしたちの班には私ともう1人の正規職員、そしてアウトリーチ支援員である田中の3人が所属しています。
―アウトリーチ支援とはどのような支援を行うのでしょうか。
田中:
通常、私たちが訪問して、相談を受けるのが本来の支援の形なのですが、今のところ、こちらに相談に来ていただいた方のご自宅を訪問するパターンが多いです。私は主に引きこもりの担当をしているので、親御さんからお子さんの引きこもりの相談をいただくことが多いですね。その逆もあり、30代のお子さんから、50代の親御さんの引きこもりについて相談を受けるということもあります。
中津留:
我々はアウトリーチの研修は受けていますが、専門的な資格を持っているわけではないので実践となると想定外のことも多く、対応の難しさを感じています。津久見市では、社会福祉協議会により全地域に地区社会福祉協議会が設置されており、地域の自治会長さんや地区の役員さん、民生委員さんなどの意見交換の場となっています。実はアウトリーチの最たるものは、地域の人と直接ふれあう民生委員さんや地区の役員さんの活動だと思っています。
―津久見市の社会福祉において、何が課題だと感じますか。
中津留:
地域の情報は地域の人たちが主導で発見、発掘している現状があります。民生委員さんから「あそこに引きこもっている子がいるらしい」という情報はあがってくるのですが、親御さんが相談に来ないと私たちからはアプローチできません。過去、市役所に相談にいらした親御さんが「あぁ、話しただけでちょっとすっきりしたわ」とおっしゃっていたことがあったので、まずは、相談に来てもらうために私たちに何ができるかを考えなければいけません。
家庭児童相談員との連携で
引きこもりが改善されたケースも
―引きこもりについて、どのような支援を行っていますか。
中津留:
人とコミュニケーションをとるのが難しい方の場合は、まずは会って、挨拶を交わすことから。たとえ一方通行でも、それがスタートになりますね。
田中:
18歳までの方は社会福祉課の家庭児童相談員が担当しています。私たちは義務教育が終了した方々の引きこもりを担当しています。学生時代に不登校になりそのままずっと引きこもってしまう方もいるので、私たちも家庭児童相談員と一緒になり、学生の頃からつながっていけたらいいなと思っています。
中津留:
「あの人が引きこもっている」という情報はいただくのですが、本人が支援を必要としていない場合も多いです。ご本人が困っていると感じていなければ、こちらが介入できないので、ご本人に会って納得してもらうまでが大変です。
田中:
お子さんの引きこもりの問題は、基本的に親御さんと話をするのですが、親御さんでさえ本人がどう思っているのか分からない場合が多く、各市町村陣営にいろいろと相談しながら対応しています。
―引きこもりが改善されたケースはありますか。
田中:
何件かあります。ひとつ例を挙げると、小学校高学年のころからずっと引きこもっていた子がいて、家庭児童相談員が担当していたんです。その子が働いていなかったので、私も一緒に支援に関わることになりました。はじめはほとんどコミュニケーションを取ることができませんでしたが、病院に通院することで就労継続支援B型事業所に1年間休まずに行けるようになりました。
支援の可能性を広げる
地域共生社会の実現
―これから津久見市がどんな街になってほしいと思いますか?
中津留:
比較的に小さな町ですから、若い世代が少ない、地区の役員さんや民生委員さん、消防団員のなり手不足といった地域資源の不足というのは否めませんが、近所同士の支え合いや地域共生の精神は残っている点が津久見市の魅力。お年寄りと若い人、子どもが一緒に集まれるコミュニケーションの場があればいいですね。たとえば、お年寄りが役割を持って草履編みを子どもに教えたり、子どもたちはお年寄りと触れ合ったり。子育て世代にとっては、誰かが子どもを見てくれるとありがたいですし、そういった触れ合いによって街全体が元気になります。地域共生のひとつの形になると思うんです。
田中:
支援員として、津久見市を俯瞰していますが、引きこもりに限らず、一般就労が困難な方は少なくないと感じています。そういう方が集まれる居場所や、就労訓練ができる場所がもっと増えればいいなと思っています。
―引きこもりや不登校など、悩みを抱えている方にメッセージをお願いします。
中津留:
まずは相談というよりも、「少しおしゃべりする」感覚で来ていただけたら。そこから、何かしらで問題解決につながることもあります。
田中:
お電話をいただけたらこちらから出向くこともできますし、他の機関につなぐこともできます。相談すること自体が正直、ハードルが高い部分もあるかと思いますが、「こんなことを相談していいのか」とか、「こんなことを言ったら、こう思われるんじゃないか」など考えずに、気軽に相談に来てほしいですね。
お問い合わせ
津久見市社会福祉課
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