宇佐市役所福祉保健部 子育て支援課では、困りごとを抱えた人が相談に来た際、保育士、幼稚園教諭、保健師、心理士等の資格を有する職員が対応をしています。悩みを抱える本人や親の気持ちに寄り添い、専門知識を活用しながら課題解決を目指します。今回は、子育て支援係の永岡克己さん、小野真紀さん、野尻依舞紀さんに宇佐市が抱える課題、3人が考える福祉のゴールについて聞きました。
各機関と連携をとりながら
地域の困りごとを解決
―福祉保健部に寄せられる相談はどのようなものが多いですか?
永岡
毎週新規で5~6件の相談が寄せられ、現在は60件ほどの案件を各職員が担当しています。本人や家族から、地域や警察など、相談者はさまざま。昔は身体的虐待の相談が多かったのですが、最近は、父親から母親へのDV、ネグレクト、子どもを精神的に追い詰める心理的虐待の案件が増えていると感じます。
―宇佐市では相談に対してどのように対応していますか?
小野
まず、私たち子育て支援課の職員が話を聞いて、保健師やスクールソーシャルワーカーをはじめ、必要に応じて関係部署につないで解決を目指しています。定期的に実施される要保護児童対策地域協議会で子育て支援課や福祉課、児童相談所、保健所、学校などと情報を共有しています。
―これまで印象に残っている相談はありますか?
永岡
外国人のご家族の問題で、夫が妻に対してDVを振るっていると地域住民の方から警察に通報がありました。その家庭には小さな子どもがいるとのことで、子育て支援課に連絡が入ったのが支援のきっかけです。
野尻
母親と面談を行うことになったのですが、はじめの頃は全く言葉が通じず、苦戦しました。そこで、英語が話せる職員に訳してもらったり、Google翻訳を活用しながらなんとかコミュニケーションを取りながら支援を進めることになりました。
小野
母親の自立を目指し、お子さんを保育園に入所させる手続きなどを行おうと試みたのですが、その国では、“子どもが小さいときは母親が育てるほうが良い“という考えが根強く、なかなか首を縦に振ってもらえませんでした。しかし、保育園に入所させるメリットを説明しながら、解決に向けてコツコツ動き出したところです。
専門性の高い職員たちが
相談者に寄り添うことから
―宇佐市の支援体制の強みを教えてください。
永岡
小野は幼稚園教諭、野尻は保育士として、長年幼児教育・保育の現場で働いてきた経歴を持っています。高い専門性を持つ職員が窓口で相談業務を担当し、専門知識を活用しながら支援することができるのが強みだと考えています。
野尻
保育園勤務時代の経験を活かし、お子さんの成長や発達の観点から親御さんからの相談に応えています。また、私自身も子育て中なので、母親の悩みに寄り添うことができるのも強みのひとつかもしれません。
小野
お母さんや子どもと接するときには、“とにかく否定しないこと”を心がけています。やはり、経済的に困窮していると、余裕がなくなり、攻撃的になりがち。相談者の気持ちに寄り添いながら、まずは聴くことに注力します。
―相談や支援を通して感じたことはありますか?
永岡
困りごとを抱えているお子さんは、本人に問題があるのではなく、家族との関係性、学校での交友関係、介護の問題など、原因が複合的であるケースが多いです。問題の一つひとつを紐解いていくと課題が解決することも多い。各家庭の原因を見極めて、適切な支援を届けていくことが重要です。
ー福祉における課題は何だと思いますか?
永岡
交通利便性の低さは福祉課題のひとつだと感じています。宇佐市は、最寄駅まで距離があり、空港も遠く、「車がないと住みにくい」街だと感じます。子育て支援課へ来訪する際、保育園への送迎の際などの移動支援も検討していきたいと思っています。
小野
さまざまな部署で分担しながら支援を実施しているので、部署によって大きな負担がかかることもあり、支援がスムーズに進まないことも…。各部署の状況を私たちでも把握し、シェアすることで課題解決の速度を上げることができるのではないでしょうか。
野尻
専門的な視点で判断する際、療育機関に通わせることを検討したほうがよい場合があります。しかし、最終的には親御さんや学校に判断を委ねることがほとんど。家族がこのままでよければいいのか、将来のことまで考えたほうがよいのか、福祉支援については明確な答えがありません。関わる皆が納得する答えにたどり着けるアドバイスを心がけています。
オーダーメイドの支援と
若者の居場所づくりを推進
―子どもの年齢によって支援の難しさを感じることはありますか?
小野
ひきこもりや不登校など、さまざまな問題を抱える子どもたちがいます。中でも問題が顕在化しづらいのは15歳以上。義務教育期間は、学校とのつながりがあるので、本人の状況や家庭環境が把握しやすいです。高校に進学しない子、進学したものの退学してしまった子など、彼らがそんな生活を送っているのか知る由がないのです。
永岡
中学校卒業後も、学校や家庭と連携が取れるような仕組みを作る必要性を感じています。現在、大分県内には不登校やひきこもりの子は増加していると聞きます。学校卒業後、どこに相談すればよいかわからない子どもたちが、心の拠りどころを見つけられるような場所として、この「このゆびとまれ」を活用してほしいですね。
野尻
社会とのつながりがなくなり、一度ひきこもり予備軍になってしまうと、社会復帰が難しくなる可能性が大きくなります。どうやって若者の社会参加を促していくかが重要です。社会とつながりを失った子どもたちへのアプローチの方法を模索すること、それが私たちの使命です。
―今後のビジョンを教えてください。
野尻
今の子どもたちは、家の中でスマホをいじったりゲームをする時間が長くなり、リアルな社会や地域と関わる機会が少なくなったと感じます。近所の人たちと関わる楽しさなどを伝えていきたいと考えています。
小野
私自身、相談や悩みがあれば、ママ友に相談しながら仕事と子育てをしてきました。今はスマホがあってつながりやすくなったと言われるものの、人間関係自体は希薄化しているのではないのでしょうか。「子育て支援課に相談に行く」と聞くと仰々しく聞こえるかもしれませんが、「ママ友に相談しに行く」ぐらいの気軽な気持ちでまずはここに相談しにきてほしいです。ママたちの心を楽にしたり、背中をポンと押してあげたりできる存在になりたいと思っています。
永岡
各家庭の問題はさまざまで、時代が進むごとに複雑化しています。包括的な支援を謳っていますが、誰にでも当てはまる支援ではなく、属性や家庭環境に応じたオーダーメイドの支援が必要だと感じています。まずは既存の支援事業を再度確認し、必要に応じてアレンジを加え、若者の居場所づくりに注力していきたいと考えています。
お問い合わせ
宇佐市役所福祉保健部 子育て支援課
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